妄想書き溜め用。
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靴箱に入れられた大量の紙屑。
とことん罵言の書きつくされたそれを、出帆はいつも通り回収して帰る所だった。
「あなたが北崎さんね?」
「…え」
北崎さん。
今、自分の名前を正しく呼ぶのは、担任と、あの男しかいない。
しかしその声はどちらのものでもなく、少し落ち着いた高い声だった。
横を向くと、そこには先生らしき若い女がいた。
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遠くの空が綺麗。
出帆は虚ろな瞳に濁った青を映す。
しかし、次の瞬間それは背景と化し、黒い塊が迫ってくる。
「あーあ、こんなになって」
出帆の小さな躯を軽く蹴飛ばす白いシューズ。
その足は、いつも彼女の制服を泥だらけにする女子達のものでも、
ましてや生徒が着用を義務付けられている指定の靴でも無かった。
まだ生地の堅い、まっ白い部分が目立つシューズだ。
「出帆」
「………。」
ドッ
鋭い一撃が右肩に入り、出帆は苦痛に顔を歪めた。
男は静かに口端を吊り上げ、憐れむ様な、慈しむような目で出帆を見下ろした。
細いようでしっかりしている男の影が、うずくまる出帆と太陽とを遮る。
「そろそろ音をあげる頃かな?出帆」
「……せ…んせ」
出帆はなんとか四肢を折り曲げ、立ち上がろうとする。
それをまた、男は空きカンを扱うかのように蹴り転がした。
コンクリートがひんやりと、崩れ落ちた出帆の体を迎え入れた。
「………ぅ…」
どこまでも青い空、ちぎれた白い雲。
そして、気持ち悪いくらい黄緑色のフェンスにもたれ、少女が泣いていた。
「ひっぅ………っ…ぅ………」
靴跡や泥や埃でボロボロのセーラー服を、しわくちゃになるまで握り込み、
少女は自らの体を掻き抱いて、時々、嗚咽を漏らしては、ただ涙をこぼした。
その涙の一滴が、ふいに、地面に垂直に墜ちて小さな破裂音と共に散った。
体がふわりと浮く心地がした。
が、次に感じたのは、頬を軽く擦った痛みと、コンクリートの冷たさ。
そこで初めて、少女は自分が投げ飛ばされたのだと知った。
しかもそれは、普段あの人達にやられるようなやり方ではなく、
紙ゴミをゴミ箱に投げ捨てるような、呆気ないものだった。
「ねえ、お前さ」
未だ滲んだ視界には、かろうじで男が一人いた。
血が回りすぎてボンヤリとした頭では、それ以上の事は分からない。
全てが一呼間遅れて過ぎていく中、男は少女に腕を伸ばした。
「何で死にたいって言えないの」
ぐ、と静かに力が加わり、次第にどくどくと血管を流れる音が聞こえる。
「自分一人で死ねない癖に、…ムカつくんだよ」
喉が痛い。顔が熱くなる感覚もあれば、冷えていく感覚もあった。
「ねえ、死にたいんだろ?俺が殺してやるよ」
痛い、痛いよ
苦しい、お願い、やめて
怖い