[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
夢だ。きっと夢なんだ。
彼が死んだなんて、嘘だ。嘘だ。嘘だ。
細く、陽に当たったことの無いような青白い色に変色した彼の手首を掴む。
抵抗も、力が入る感触も感じられない。ビクリとも動かない、その手。
ドクドクと脈動を伝える管さえも動かない。血の通っていない、その手。
それは事実を否定し続ける私に、残酷な現実を押し付けた。
彼は、人間なんて嫌いだという顔で、彼女を見上げた。
無理矢理檻の中に閉じ込めて、餌付けして、それに飽きたら殺して処分する。
彼にとって、保健所とはそういうものにしか思えなかったのだろう。
日々与えられる餌は食べても、人間には決して屈さない。
その決心は、大嫌いな牢屋を出た後も、ずっと続いていた。
今の俺は犬じゃなくて、お前と同じ人間の形をしていて、
どこかも分からない場所にいて、よく分からない奴らと暮らしている。
訳の分からない夢でも見てるのか、何でこんな事になってるのか
自分でも理解できない事ばかりだが、
ただ一つ言えるのは、俺はそれなりに元気にやってるんだと思う。
お前がいつも俺の傍でギャーギャー騒いでたのは覚えてるし、
お前に顔の回りをこねくり回されたのもよく覚えてる。
ずっと言えなかったが、ああやって俺の顔で遊ぶのはやめろ。
不快だったんだぞ、あれは。あんまり抵抗しなかったが。
あとあの餌。もっとマシなやつは無かったのか?味がおかしかった。
リードだってそうだ。何であんなピンクの花柄なんて選んだんだ。
俺がどんだけ恥ずかしかったか、わかってんのか。この野郎。
それから
「………こんなもん書いても、今更か」
適当に投げ捨てた紙の塊が、弧を描いて、てんてんと小さく跳ねて落ちる。
どうせ大した内容など書けるわけがない。伝える相手なんていないのだから。
「ああ、忘れてた」
床に落とした紙屑をもう一度広げ、手紙に戻し
まだ上手く持てない鉛筆を握りしめ、殴り書きで付け足す。
最高の締めの言葉を思いついた。
ライは数秒で書き終えた文字を見て、これでよし、と満足そうに口角を上げた。
それから、お前なんか大っ嫌いだ。
I detest liar.
最後に彼がついたのは
もう届かない彼女への、心からの嘘でした。
「………ぅ…」
どこまでも青い空、ちぎれた白い雲。
そして、気持ち悪いくらい黄緑色のフェンスにもたれ、少女が泣いていた。
「ひっぅ………っ…ぅ………」
靴跡や泥や埃でボロボロのセーラー服を、しわくちゃになるまで握り込み、
少女は自らの体を掻き抱いて、時々、嗚咽を漏らしては、ただ涙をこぼした。
その涙の一滴が、ふいに、地面に垂直に墜ちて小さな破裂音と共に散った。
体がふわりと浮く心地がした。
が、次に感じたのは、頬を軽く擦った痛みと、コンクリートの冷たさ。
そこで初めて、少女は自分が投げ飛ばされたのだと知った。
しかもそれは、普段あの人達にやられるようなやり方ではなく、
紙ゴミをゴミ箱に投げ捨てるような、呆気ないものだった。
「ねえ、お前さ」
未だ滲んだ視界には、かろうじで男が一人いた。
血が回りすぎてボンヤリとした頭では、それ以上の事は分からない。
全てが一呼間遅れて過ぎていく中、男は少女に腕を伸ばした。
「何で死にたいって言えないの」
ぐ、と静かに力が加わり、次第にどくどくと血管を流れる音が聞こえる。
「自分一人で死ねない癖に、…ムカつくんだよ」
喉が痛い。顔が熱くなる感覚もあれば、冷えていく感覚もあった。
「ねえ、死にたいんだろ?俺が殺してやるよ」
痛い、痛いよ
苦しい、お願い、やめて
怖い
ガリリ、と、くぐもった音を立て、割と大きな氷を一粒。
喉を過ぎる氷塊の欠片のように
暑さは空気に溶けて、俺の体を這う。
そうそう、今日ツイッター更新してねぇわ。
プチプチとボタン音。
「ガチで暑いなう」
外に出れば、更なる熱と共にぬるい微風。
ビニールのプールバックを振り回し
キャッキャと笑いながら、横を走り抜ける子供達。
その瞬間、一瞬だけ吹き抜ける冷たさ。
パチ、と音を立てて、平べったいケータイを開いた。
「タダでプール入れるとか裏山シス」
すぐそこのコンビニで買ってきた、ソーダ味のガリガリ君も
歩きながら食べるうちに、だらだら蜜を垂らし
コンクリの道路を点々と汚していく。
夕暮れの中、何処かで風鈴の音がした。
沈み始めた日にアイスをかかげ、写真を撮る。
「【夏といえば】アイスウマ―【冷たいもの】」
ナツィッタ―
そろそろ8月も終わります