妄想書き溜め用。
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「残念だが、、、ちょっと足りてないな、坊主」
夜になっても、相変わらず賑やかなレイク・セントラル。
その無駄に広い広場に並ぶ露店の一つ、セド・ベーカリーの前で
ヒィノは足りない小銭を持ったまま立ち尽くした。
「、、、最後の一個、ですよね」
「そうだな。だが、まけてくれとか言うなよ」
「、、、。」
55ウィン、55ウィン足りないのだ。
今日はいつもより多く泥棒やスリを捕まえて、金銭に余裕が出たので
久々に大好きなレーズンパンが食べれると思っていたのに。
少年は耳にかかり切らない前髪を無造作にかき上げながら溜息をついた。
仕方なくパンは諦めたが、パンの代わりに寝床くらいは良いだろう、と思いつき
了承を得ず、自己判断で店の横のスペースにしゃがみ込んでやった。
パン屋の主人、セドが訝しげにじっと見つめてくるが、無視をする。
少しくらい無茶しても、経験の足りない子供ならばと許してくれる事も多い。
それは、少年にとっての生きる知恵と言うか、悪知恵みたいなものだった。
「レーズンパン、一つくださーい」
その直後、狙ったようなタイミングで注文の声がする。
視線を向けると、その客と目が合った。すると客はにこりと笑った。
眼鏡をかけた、いかにものんき気そうな青年が、今日最後のレーズンパンを買った。
そのまま帰ってしまうだろうと、少年は期待する自分を咎めたが
眼鏡の男は意外にも、レーズンパンを持って自分の方にやってくる。
ヒィノはその様子を、ただ呆然と眺めていた。
青年が自分の隣に座って、またにこりと笑う。
嗚呼、自分は夢を見ているのでしょうか。
こんな無慈悲な人間ばかりの場所に、こんなに慈悲深い人がいるなんて―――
ヒィノは袋から出されたレーズンパンから目が離せなくなる、が。
青年は当たり前のように、ばくばくと少年の目の前でパンを食べ始めた。
状況が分からないまま、青年が持っていたはずのパンが消えていく。
数秒たって、やっと我に戻ったヒィノがハッして青年を見ると
両頬を最大限まで膨らまして、まぐまぐとパンを平らげる青年がいた。
ごくんと喉を盛大に鳴らし、一息ついた所で、青年がヒィノの視線に気づく。
「元気だしなよ、明日もきっとまた売ってるから。ね!」
「、、、貴方、これ以上無いくらいに卑劣な人間ですね」
え、何で?と青年は首をかしげて、袋をクシャクシャと丸める。
あまりの能天気さに、怒ることさえ馬鹿らしく思い
賢明な少年はあえて、そこで話を止めた。
しかし、目があったことで少年に親近感が生まれたのか、青年は話を続ける。
「ところで君、親は?小さい子がこんな時間にいたら危ないよ?」
「いないですよ。2年くらい前に捨てられました。」
「え、そうなの?!でも凄いね、君まだ9歳そこそこくらいにしか見えないのに、、、」
「残念ですけど僕は6歳です」
「ええ?!うっそ!」
衝撃的な告白に、青年は大げさに飛び上がった。
ヒィノはしまった、と思ったが、やはり予想通り、青年は興味津々で話してきた。
「でも、そんなに小さいのにどうやって生活してるの?まさか盗みとか?」
「、、、いえ、そんなことは、、、」
「じゃあ、どんな事してるの?」
「、、、。」
少年はため息をつき、小声で、このことは内緒にしてくださいよ、と念を押した。
「警備隊の隊長に協力してもらってるんです。町で泥棒やスリ等を捕まえて
多く捕まえた分だけ、多くの謝礼金をもらえるんです。」
「へぇー、そんな事してるんだ、なかなか良いアイデアじゃないか!」
「、、、ま、まぁ、、、そうでしょうか?」
罪を犯す事無く、逆に町の平和を守りながら暮らす孤児なんて格好良い、と
青年がヒィノのことを褒める。ヒィノは少し照れながらも返事をした。
お世辞かどうか確かめるまでもなく、嬉しいと思ってしまう単純さも子供故、だ。
が、案外この人良い人なんじゃないだろうか、と心を許しかけた矢先だった。
「そっか、大変だろうけど、頑張ってね。僕はそろそろ帰るから」
「え」
「楽しみにしてるラジオがあるんだ。今日はどんな展開になるんだろうなぁー」
眼鏡を軽く押し上げると、青年がよっこらせと立ち上がった。
「そうだ、君の名前は?」
「ひ、ヒィノ、、、ですけど」
「そう。僕はインテッド・ビートハート。また会えるといいね。それじゃ、またね!」
三度目のにこりを済ませた後、青年―――インテッドはスキップで帰って行った。
僕なんて、ラジオすらまともに聞いたことないのに――――――――!
少年の心にちょっとした憎しみが生まれた。あの能天気さが、更に苛立ちを増幅させる。
やっぱりあの人は最低な人だ、と丸められた袋を思いっきり踏み潰した。
「セドさん!」
「な、なんだよ」
店仕舞いの準備をしていたパン屋の主人は、いきなり名前を呼ばれ驚く。
「明日、僕の分のレーズンパン1つ残しておいてください、お願いします!」
「え、あ、ああ、、、まあ、予約ってことでいいか?」
「はい!」
ポケットの中の、305ウィンに満たなかった250ウィンを確認して、どさっと座り込む。
ヒィノは半ば八つ当たりに近いようにも思える誓いを立て、眠りについた。
絶対にレーズンパンを買ってみせる、あの男を見返してやる。
そして、明日こそはパン屋の主人に、自信満々でこう言ってやるんだ。
レーズンパン、一つ!
意外な所で再出演の眼鏡男。
2/25 ちょっと都合合わせで主人公の名前がグレイル→ヒィノに。
、、、いや、「グレイル」「アレイヴ」「サレイズ」って揃ってるのもどうかなt(ry
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