忍者ブログ
妄想書き溜め用。
[49]  [47]  [46]  [45]  [44]  [43]  [42]  [41]  [40]  [39]  [38
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


暇です。
暇で、暇すぎます。
暇で暇で仕方ないです。
あーもう暇なんですってワタクシ。
もう腐りそうなくらい暇なんですって。
死にそうです。暇で死にそうです。本当死んじゃいそうです暇過ぎて。
暇ですねぇ暇で暇で暇暇ひまヒマヒマ…
……………………。


「~~~っ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇だ暇ッッッッッだ」
「あ"あああぁぁうっせぇ!黙っとけアホ犬!!」

アホ犬、と怒鳴りつけられた憐れな暇人は、「すみません…」と、しょんぼりしながら言った。
まさに、主人に失敗を咎められ、耳を垂らして落ち込む忠犬…いや、アホ犬のように。

「でも本当に何もすること無いじゃないですかぁ、旦那様」
「…あのなぁハイネ、俺は暇じゃない。暇ならもう一回、自分の部屋でも探しに行ったらどうだ」
「だってどこを探しても無いじゃないですかー!」

そう、この憐れなアホ犬、ハイネには自分の部屋がなかった。
この屋敷に迷いこんだ者には個別の部屋が与えられていたのだが、
ハイネの部屋だけは何処を探し回っても見つからなかったのだ。

そんな彼を可哀想に思い、情に厚いこの青年は、泣きながら自分の部屋を訪ねてきた彼に
自らの部屋のルームシェアを提案してしまった。

「この屋敷も広くなったんだ、もしかしたら見落としてるかもしれないだろ。諦めんなよ」
「嗚呼、旦那様はお優しいです…ワタクシ感激いたしました、ぐすっ」

ハイネは豪快に、周りの髪の毛ごと目元をゴシゴシと擦り、大きな溜め息をついた。
そして、深海のような澄んだ深緑色の瞳を、何かを期待するように青年に向ける。

「というか、暇なら他の奴の所に遊びに行けば良いだろ」
「え!旦那様は遊んで下さらないのですか?!ロシアンルーレットしましょうよ!!」

本当に遊んでもらえると思っていたようで、よく見るとその手には
死神人形やガイコツなどで飾られた、危険なのかどうか微妙な紫色のピストルが握られていた。
確かに素直で、純粋で、いい奴なのだ。ハイネは。
扱いが面倒な部分さえ無ければ。

「さっき暇じゃねぇって言っただろ!遊ぶも何も忙しいんだよ俺は!!」
「…ハッ!ワタクシとしたことが、そんな事すら察せず旦那様に失礼な申し立てを!」

ハイネは、申し訳ございませんでした!と、頭を下げたかと思うと、

「ではワタクシ、外で遊んで参ります!」

ボサボサになり、埃でも被ったのではないかと疑われるような灰色の短髪と
無駄に暴れるお陰でヨレヨレになってしまっているスーツを勢いになびかせ、
彼は元気よく部屋を飛び出して行った。
広い廊下の先から、無駄にバカでかい声が響く。

「どーなたかー!ワタクシとあーそーびーまーせーんーっかーーーー!!!」


開きっ放しにされたドアを閉めると、一人きりの部屋は今日初めての静寂に包まれた。
これでようやく、話の続きを読めそうだ。
青年は読みかけだった本を手に取り、椅子に体重を預け、ふうと溜め息をつく。

「…何であんな居候受け入れたんだか」

片手で白混じりの茶色い髪の毛をいじりながら――――


***************************

死んだ犬がやってくる場所。
元は犬だった人間達が自由きままに暮らす場所。
何故この場所に死んだ犬が集められているのか。どうして人間の姿になるのか。
そもそも何故こんな場所が存在するのか。
誰もが抱く疑問に、彼らは、「そういう事になってるから」としか答えられない。
新しい"入居者"が来れば、いつの間にか廊下の先に部屋が増え、プレートに名前が刻まれている。
入居者が増え、このような現象が繰り返されるうちに、屋敷の内部は以前より複雑に、
より広大になっていた。

迷い犬を受け入れる謎多き屋敷と、屋敷の生活を受け入れる犬達。
そして此処にも、迷いこんだ犬がいた。


「トゥディのミーの饅頭……ブロークンっす……」

シルバーブロンドの長い髪を高い位置で結い上げた一人の女。
彼女が自らの手元を見つめ呟くのを、ハイネは尻餅をついてポカンと見あげていた。
廊下の曲がり角でぶつかって転倒、そして一目惚れなんてよくある話だが、
彼の場合、一目惚れというよりは、キラキラ光っているその髪への好奇心の方が強かった。
そして上から投げ掛けられる、カタコト混じりの不思議な言語。

「イェスタディから楽しみにしていた、ミーのスペシャル饅頭…。」
「も、申し訳ありませんお嬢様!お怪我ありませんか?」
「……。」

次第に俯き、ボソボソと言葉を出し続ける彼女に、
どこか痛いのだろうかと心配になったハイネは、すぐに立ち上がり彼女に歩み寄った。
もちろん、ハイネに彼女の喋っている言葉の意味など、殆ど理解できていない。
第一声を聞いてすぐ、自分の理解できない言語として捉えてしまったようで、
彼女の顔を覗き込んだものの、どう言っていいか分からず、首を傾げることを繰り返す。

「あのっ、えーと……何処か痛い所でも」
「痛いっす。ミーのハートがスロービングっす」
「ス……スロービン………」
「ベリーベリー気に入らないパーソンっす、お前」

スッと女の顔が上がり、ハイネと視線が合った。
と同時に、目の前で何か白い閃光が弾け、反射的にハイネは後ずさる。
ぐしゃり、と、女が一歩前に出た直後に聞こえた音で、
ハイネはやっと赤いカーペットの毛が付いた和菓子の存在に気付いた。
が、今更だった。

「デ ス ト ロ イ っ す」

視線を足元の饅頭から目の前に戻すと、
女の手に握られた出刃包丁が、鈍く白い光を反射した。


***************************

一閃一閃一閃!
刃が煌めき、光が踊り狂う。
女は包丁を華麗に振り回し、ハイネに襲いかかっていた。

「ィィイィイイ~~~ハアアアアァ!!!!」

とても楽しそうな奇声をあげながら、次々と空気や壁を斬っていく。
普通なら、命ごいをして逃げ回りたくなるような、そんな光景だった。
普通なら。

「…ああ!おにごっこ!分かりました!!」

容赦ない猛攻をひょいと避けながら、
ハイネは顔を輝かせ、追いかけられる子供の役に回った。
仕方無い。アホ犬だから。

横振りに払った得物を、上体を後ろにのけぞってかわすと、更に深い横振りが入る。
ハイネはそれもかわすと、女に背を向け走り始めた。
後ろから自分以外の足音が追い掛けてきて、たまに背中側を何かがかすめる気配がした。

「やりますねお嬢様!ワタクシに追いつけるような方には初めて出会いました!」
「ならスーンにリタイアするっす!スライスサーモンにしてやるっす!!」
「スライスサーモン!?分かりますー!オイシイですよね!!」

階段を全て降って屋敷の広間、また階段を駆け上がり、廊下、階段、廊下、廊下。
避けて、飛び越えて、先回りして、逃げて―――
鬼ごっこという解釈はあながち間違いでは無くなっていた。
ハイネの頭上を鋭い風が流れ、逃げそびれた髪の毛数本がその場に舞う。
女はチィッと舌を鳴らし、しかし愉快そうに口角を上げながら、包丁を構え直した。
走り回る彼らの息は、まだまだ上がりそうにない。


***************************

「おぉー、ライじゃねぇか、ひさぷー」
「何なんだその、ひさぷーって」
「分かんねぇ?久しぶりに会えてプリティな気分って事だぜィ」
「最後にお前に会ったの昨日だろが。それにプリティって…」

どこか呆れた声と、どこか気の抜けた声。
屋敷の一室の前で、ハイネと同居中の青年と、大体男と同じくらいの歳の男が、言葉を交していた。
挨拶も程々に、ライ、と呼ばれた青年が、右手に持っていた物を差し出す。

「ほらよ、借りた本。案外面白かった」
「ありゃ、もーう読んじまったのかィ。どーもー」

暇人だからな。
……なんて言ったら、ハイネが可哀想とか、やかましいんだろうな。
一人勝手に完結させ、ライは言いかけた言葉を喉奥に呑み込んだ。
そんな事を相手が考えているとは露知らず、目の前にいる男は
普段通りヘラヘラと笑みを浮かべている。

そういや、アイツに遊びに誘われても、真面目に付き合ってやったこと無かったな。
ライはふと、常に遊び相手を探して走り回る暇犬の顔を思い出した。
今頃、誰かが遊び友達、もしくは被害者にでもなっているに違いない。
……たまには付き合ってやっても、良いかもしれない。

「おィおィ、まーたお前オイラのいる前で考え事してんだろ。ニヤニヤしちまってさァ」
「誰がニヤついてるって?」

いやお前だってお前。
その男は不満そうにライにそう告げた。

「その傷だらけの顔がおかしくてな。」

ライの言葉通り、全身傷痕だらけという風体の男は、やかましいやィと口を尖らせた。


***************************

やがて屋敷の中央にぽっかりと空いた空間から、赤い夕日が見える頃。
原っぱの広がるその中に、一人は転がり、それを見下ろすようにもう一人は佇んでいた。
その原っぱに一本だけ立っている大きな木が、さわさわと静かな音をたて揺れる。
暴れた後の温まった体には丁度良い、穏やかな冷風だった。

「…オマエ、なかなかエクセレントっす。」

ふっ、と笑い、女は包丁を弄びながら機嫌良さそうに呟いた。
くるくると包丁が宙に舞う度、先ほどまでとは違う色の光がキラキラと光る。

「今までミートしたミーの反逆者共の中で、一番エキサイティングでクレイジーだったっす!
 オマエみたいなピープル、ナイストゥーミーチューっす」

女は、心待ちにしていたという饅頭が駄目になった事にはもう腹を立てていないらしく、
それどころか彼女にしては珍しく、敵だった相手に賛美の言葉を送っていた。
うっそりと目を細め、今日の出来事を思い返す姿は、端から見れば、
まるで初デートの後の女の子のような可愛らしささえあった。

「トゥディはこのへんで勘弁してやるっす。せいぜいミーにサンキューするっす!」

女は夕日に背中を照らされ、ぼんやりとしたオレンジの光に縁どられていた。
踵を返そうとしてふと振り返った顔にはまだ、笑みが残り続けている。
鼻歌を歌いながら去って行った女の後には、満足そうな顔をして大の字に倒れるハイネがいた。


***************************

それから翌日のこと。

「まさかこんな場所がお前の住み家だったとはな……」
木の枝の上でトランポリンの様に、ボッフボッフと楽しそうに飛び跳ねるハイネ。
それを木の下で、その枝折れるんじゃないかと若干心配そうな目で見上げるライ。
二人がいるのは屋敷の中央、鬼ごっこの最終地点となった場所だった。

部屋を出て行った時よりも更にヨレヨレになったハイネが、俺の部屋に飛び込んできて
「ワタクシの部屋見つかりました!旦那様!」と渾身の力でタックルしてきた時は
後頭部を強く床に打ち付けながらも、よかったなと返答したが、
一本立った木に“ハイネ”と書かれたネームプレートが掛かっていたのは流石に驚いた。
まあ、暴れ回るハイネにはピッタリの住み家だとは思うが。

「ワタクシもびっくりです!後ろ向いて走ってたら、頭をぶつけて気絶してしまって…」
「目が覚めたら自分のプレート見つけたってか。……本当なのか?それ」
「本当ですよー旦那様!」

ハイネが急に空中で後ろに倒れ、その勢いで両足を枝に掛け一回転した。
ライはその光景に一瞬声を上げかけ、そしてもうハイネの方を見ないことにした。
が、見ないようにした途端に、ガサガサ音を立てていた葉が静かになる。

「…それでですね、旦那様」
「ん?何だよ急に大人しくなって」
「たまになら、また旦那様の部屋に遊びに行ってもかまいませんか?」

ちらりと視線を向けると、遊んでいた枝に座り直して寂しそうにしているハイネが見えた。
別に、遠い場所に引っ越して会えなくなる訳でもないのに、とライは思う。

「そんなの自分の好きにしたらいいだろ。来たけりゃ来いよ」
「でも旦那様はいっつも、俺は忙しい、黙れアホ犬と……」
「お前が一日中遊べ遊べうるさいからだ。俺はお前みたいに一日中走り回る体力も気力も無い」
「半日くらいだったらよろしいですか?!」
「……たまにだからな。長くて、半日だからな。」

一応念を押したつもりで、ライは答えた。
途端に上の方で、ありがとうございます!!とハイネがはしゃぎ出し、
また、青々とした木々の葉が可哀想な音を立て激しく揺れる。
言葉をちゃんと理解したかどうかは微妙だが、まあ今は良いとしよう。


「お話中、ソーリーするっす」

突然現れたのは、おかしな口調の女。年はライよりちょっと下くらいだろう。
予想していなかった来客に、ライは首を傾げ、ハイネは「あっ」と顔を輝かせた。
ハイネの時と同じように、真っ先に女の長い銀髪に目を引かれ、ライもまじまじと女を見つめる。
そして、ライは彼女のその素性を知らずに、軽いノリでハイネに尋ねた。

「お前の知り合いか?この白髪チビ」

白髪チビ―――――――

「はい!このお嬢様が凄いお嬢様です!」
「え?」

凄いって何が、と聞こうとして、次の瞬間ライは表情を変えた。
何か、シャキン、という不吉な金属音がした気がした。
耳元で聞いたらまず不安と恐怖に駆られるような、擦れる音だ。

「………今の音は…一体」

嫌な汗が出て来る。嫌な予感もする。
しかしライは、ハイネに顔を向けたポーズのまま固まり、音のした方へと振り向けなかった。
相変わらずハイネはそわそわと落ち着きが無く、愛くるしい瞳でこちらを見つめる。
よく分からないけど何というか、俺の周辺だけ急に空気が重た

「ミーは白髪チビじゃないっす」
「へ?……ああ、悪い」
「お前はブレイン腐ったプアーボーイっす……ハブ ア ナイス ドリィーム っす」


***************************

暇です。
二人はワタクシを置いて走って行ってしまわれました……
暇です。暇です。暇です。
ああ、とっても楽しそうでした。ワタクシが参加する前にいなくなってしまいました……
暇です。暇です。暇です。暇です。暇。
あのお嬢様の国では、唐突におにごっこを開始するのがゲームルールなんでしょうか……
暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。
暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。
暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。暇。

頭の中が「暇」という感情で埋め尽くされるまで10秒。
ハイネは飛び上がり、行く宛ても分からず走り出す。
彼の嫌いな、とっても大嫌いな、暇という名の黒いモヤ。

「ワタクシと遊んでくださーーーーいっ!!!」

それを払いのけようと、元気よく、笑いながら、地面を蹴る。
ある暇人は大声で救いを求めながら。

「なななな何なんだよお前いきなりぃい!」
「ラビットラァンっす!キャハァアアアアア!!」

そしてまたある暇人たちも、叫びながらの逃亡と笑いながらの追撃をただ続ける。
彼らもハイネと同じ、結局は屋敷という檻の中で暇を持て余しているだけなのだ。


暇な人はまた走る。
暇な人はまだ走る。
そんな彼らが走り回る話。






話。
 

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
ブログ内検索
カレンダー
05 2026/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
忍者ブログ [PR]