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「なんつーか、自分がいつ、何処で、何に殺されるのか分からないって実感した」
そう言って苦笑したのは、片目と片足に包帯を巻いた少年だった。
病院の一室。真っ白なベットに横たわる彼は、独り言のように呟き続ける。
彼のベットの上には花など飾られてなく、ただ、窓からたまに風が通るだけ。
自分が彼の護衛についてもう3日は経っているが、見舞いの客は誰一人来なかった。
彼はおもむろに、没収を免れた銃を取り出し、両手で銃身を握り締める。
「不安になるんだ。自分以外誰も信じたくなくなるっていうか、怖いっていうか。
…こんな事件の直後だからかもしれないけど」
その声が、微かに震えていて。
気付けば自分は、彼の体を抱きしめていた。
だって、雲なんて、ただの水蒸気の塊じゃない。なんのロマンもないわ。
だって、星空なんて、宇宙でガスや塵が爆発してるだけじゃない。何が良いの。
だって、花の香りなんて、人間に作用する物質があるだけでしょ。つまらないわ。
だって、木漏れ日なんて、布をちぎって日にかざせば同じ様な影は作れるわよ。
「…そう現実的に考えないのがロマンなんだよ」
「何で現実的じゃ悪いの?いつも妄想ばっかりな奴よりマシだと思うけど?」
「………」
だからって、そこまで現実的というのも、つまらないんじゃないだろうか。
…なんて考えたのは、秘密にしておこう。言ったらまた文句を言われそうだ。
「じゃあ、君は僕と一緒にいて、楽しい?」
「何よ、いきなり」
「楽しいかって聞いてるだけだよ」
「…そんなの知るわけ無いでしょ!」
ああ、顔を背けられた。でも、それが君の照れ隠しだと、もう知っている。
「…此処にいる僕は、イマジネーションだろうか、それともリアルだろうか?」
「え?」
君が全ての空想を否定したら、君の現実に、僕はいるのかな?
此処にいる、空想的な僕は、君の現実に存在できるかな。
僕が全ての現実を否定したら、僕の空想に、君はいるのかな?
此処にいる、現実的な君は、僕の空想に存在できるかな。
「訳分かんない。そんなことよりどうすんのよ、休日はあと1日なのよ?」
「だって、君が僕の提案した行き先、全部嫌だって言ったんだよ?」
「貴方がつまらなさそうな場所ばっかり選ぶからよ!」
いつもと同じパターン。結局は、全て彼女が決めてしまうのだ。
でも、それで良いんだと思う。
なぜなら僕には現実が無くて、彼女には空想が無いから。
行き先が決まったなら、こんな事を考えるべきじゃない。
二人で、旅行に持っていく、空想と現実の準備をしなくちゃ。
君は僕に現実を。僕は君に空想を。
僕達にロマンスを
二人揃ってこそ、空想と現実が混ざって、心地良いんだ。
ふと、目の前が明るくなった。
目の前にいたのは、若いチンピラみたいな人間が数人。
「じゃあ、オレはこれで遊ぼうかなっと」
「いいのか?そんな無愛想な感じのやつで」
「ばーか。こういうやつ程、泣かせ甲斐があるだろ?」
「うわーお前本当に鬼畜だよな。哀れな子だな本当」
「てことでこれ持って帰る。じゃーな」
「おう。せいぜい楽しんで来いよー」
一通り会話をすると、男は僕を連れて場所を移動した。
鳴り響く車のクラクション。
恐怖心を煽る、地面が強く擦れる時の不快音。
避け切れないほど早過ぎるスピードで、自分へ迫り来る物体。
ごく平凡に過ごしていた彼女には、リアリティの無い光景だったのだろう。
突然の出来事に目を見開き、反射的に回避行動を取ろうとした。
しかし、虚しくもあと少し間に合わない。
そこには、あまりに突然で、あっという間に過ぎた悲しみがあった。
眩しさに目を細めたある日。
空が茜色に染まりつつあった。
ふと橋の欄干を覗いたら、川辺に架けられた黒い橋を渡る君を見つけた。
歩くたびに白い柱が錯覚を引き起こして、
まるで昔の画像数の少ない、白黒映画ようにも思えた。
何だか嬉しくて、スキップをしてみたら、君も一緒にスキップをしてくれた。
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雨傘を差したある日。
空が灰色に染まったままだった。
また橋の欄干を覗いたら、真っ暗闇の川辺で橋を渡る君を見失った。
歩くたびに白い柱が錯覚を引き起こして、
まるで電波の繋がらない時の、砂嵐のようだった。
何だか虚しくて、スキップをしてみても、君は見つからなかった。
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水溜まりを歩いたある日。
空が綺麗な蒼と白の模様を作っていた。
ふいに橋の欄干を覗いたら、空に架かった黒い橋を渡る君がいた。
歩くたびに白い柱が錯覚を引き起こして、
まるで空を渡る、どこかの影絵の物語みたいだと思った。
川の水に映った、橋を渡る君の黒をじっと見つめ、目に焼き付ける。
今度は虹の架かった青い、ひどく青い空に送った。
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君と歩いた日も、君がいなかった日も、空の君と歩いた日も、
いつかは、忘れてしまうのかもしれないけれど。
こんな事、くだらないと感じてしまう日がくるかもしれないけど。
そんなことを考えていたら、自分と君の隣を二つの自転車が通っていった。
欄干から目を離し、自転車の通った方向を見てしまった。
その瞬間、君はどんな日でも、当たり前のように姿を消した。
いつも、橋の真ん中に立っているのは自分一人だけだと、分かりたくなくて、
そっと目を瞑り、孤独など知らないフリをした。
欄干に映りゆくもの
今日も一人、またこの橋を渡り、また橋を渡る一人分の影を見つける。